サイバー攻撃の脅威が日々増大するなか、企業のセキュリティ対策の重要性が高まっています。
しかし、具体的にどのような脅威があり、どのような対策を講じるべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
サイバーセキュリティの本質と効果的な対策について理解を深めることで、組織のセキュリティ強化を効果的に行えます。
この記事では、サイバーセキュリティの重要性と脅威の種類について詳しく解説します。
目次
サイバーセキュリティとは
サイバーセキュリティは、デジタル化が進む現代社会において欠かせません。
ここでは、サイバーセキュリティの重要性と基本について詳しく解説します。
サイバーセキュリティが重要である理由
サイバーセキュリティが重要な理由は、デジタル化が進む現代社会において、個人情報や機密データを保護し、ビジネスの継続性を確保するためです。
サイバー攻撃は年々巧妙化しており、被害額も増加しているため、強固なセキュリティ対策が不可欠となっています。総務省の『令和5年情報通信に関する現状報告の概要』によると、2022年に観測したサイバー攻撃関連通信数は約5,226億パケットであり、2015年の約632億パケットと比較して8.3倍増加しています。
IoTデバイスの普及やリモートワークの増加により、攻撃対象が拡大しているため、包括的なセキュリティアプローチが必要です。
適切なサイバーセキュリティ対策を講じることで、企業はデジタル時代のリスクを管理し、持続可能な成長を実現できます。
サイバーセキュリティの3要素
サイバーセキュリティの3要素は、機密性(Confidentiality)・完全性(Integrity)・可用性 (Availability)から成り立っており、それぞれの頭文字をとってCIAと呼ばれています。
機密性は、許可された者のみが情報にアクセスできる状態を指します。完全性は、情報が改ざんされていない状態を維持することです。可用性は、必要な時に情報やシステムを利用できる状態を確保することを意味します。
これら3要素のバランスを取りながら、適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。
目次へ戻るサイバーセキュリティの脅威の種類
サイバーセキュリティの脅威は日々進化し多様化しているため、企業や組織が直面する可能性のある脅威について理解しておくことが重要です。
ここでは、サイバーセキュリティの脅威の種類について詳しく解説します。
マルウェア
マルウェアは、悪意のあるソフトウェアの総称のことを指し、コンピューターやネットワークに侵入してデータの窃取や破壊、システムの不正操作などを行います。
代表的なものとしてはウイルス、ワーム、トロイの木馬などが挙げられ、メールの添付ファイルや不正なWebサイトを通じて感染し、一度感染すると深刻な被害をもたらす可能性があります。
マルウェアの被害を防ぐには、最新のセキュリティソフトの導入や従業員への教育が必要です。
ランサムウェア
ランサムウェアは、とくに注意が必要なマルウェアの一種です。
感染したシステムやデータを暗号化し、解除と引き換えに身代金を要求します。近年、その被害は急増しており、企業活動に甚大な影響を与えています。ランサムウェア攻撃を受けると、業務停止や機密情報の流出など、深刻な事態に陥る可能性があるため、注意が必要です。
最近では、KADOKAWAグループが2024年6月に大規模なランサムウェア攻撃を受け、25万人以上の個人情報が流出しました。
対策としては、定期的なバックアップの実施や不審なメールの開封を避けるなど、予防的アプローチが重要となります。
フィッシング
フィッシングは、偽のWebサイトやメールを使って個人情報やログイン情報を盗み取る手法です。
攻撃者は信頼できる組織を装い、ユーザーを騙して機密情報を入力させます。フィッシング攻撃は、技術的な対策だけでは防ぎきれない面があり、従業員の意識向上が極めて重要です。
最近では、大手消費者金融を装ったフィッシング詐欺が報告されており、偽のWebサイトへ誘導してログインIDやパスワード、カード番号、暗証番号等などの個人情報の入力を勧められます。
定期的な教育や訓練を通じて、不審なメールやリンクに対する警戒心を高めることが効果的な対策となるでしょう。
DDoS攻撃
DDoS(分散型サービス拒否)攻撃は、大量のトラフィックを特定のサーバーやネットワークに集中させ、サービスを利用不能にする攻撃手法です。
企業のWebサイトやオンラインサービスが標的となることが多く、顧客対応や売上に直接的な影響を与えます。
2022年9月には、ロシア系ハッカー集団がe-Govなど日本政府のWebサイトに対してDDoS攻撃を行い、一時的にアクセス不能にしました。
DDoS攻撃への対策には、トラフィック分析や負荷分散システムの導入が有効です。また、クラウドベースの防御サービスを利用することで、大規模な攻撃にも対応できる体制を整えることができます。
標的型攻撃
標的型攻撃は、特定の組織や個人を狙って行われる高度な攻撃手法です。
攻撃者は、ソーシャルエンジニアリングなどの手法を駆使して、組織の重要な情報や知的財産を狙います。一般的なセキュリティ対策では防ぎきれないケースが多く、被害が発覚するまでに時間がかかることもあります。
2015年5月に日本年金機構が標的型攻撃を受け、約101万人分の個人情報が流出しました。職員が不審メールの添付ファイルを開封したことでマルウェアに感染し、初動対応の遅れにより被害が拡大しました。
対策としては、多層防御の実施や異常検知システムの導入、従業員への継続的な教育が重要です。
内部脅威
内部脅威は、組織の内部者による意図的または非意図的な情報漏洩や不正アクセスを指します。
従業員の不注意や悪意ある行動が原因となることが多く、外部からの攻撃よりも検知が難しい場合があります。
内部脅威への対策には、アクセス権限の適切な管理やログ監視システムの導入が効果的です。また、セキュリティポリシーの徹底や定期的な監査の実施も重要な取り組みとなります。
目次へ戻るサイバーセキュリティの脅威が増加する背景
サイバーセキュリティの脅威は、年々増加の一途をたどっています。
ここでは、サイバーセキュリティの脅威が増加する背景について解説します。
IT・デジタル技術の進化
IT・デジタル技術の急速な進化は、ビジネスに革新をもたらす一方で新たなセキュリティリスクも生み出しています。
クラウドコンピューティングやIoTデバイスの普及により、攻撃の対象となる攻撃面が拡大しており、AIやビッグデータなどの技術を悪用したサイバー攻撃も増加しています。
企業は、新技術の導入とセキュリティ対策のバランスを取りながら、リスク管理を行うことが重要です。
サイバー攻撃の高度化
サイバー攻撃の手法は日々高度化しており、攻撃者は最新の技術を駆使して従来の防御策を突破する新たな手法を開発しているため、最新のサイバー攻撃手法の把握が必要です。
たとえば、AIを活用した自動化攻撃やゼロデイ脆弱性を狙った攻撃などが増加しています。ゼロデイ脆弱性とは、ソフトウェアやオペレーティングシステムに存在するセキュリティ上の欠陥のことで、公表される前や修正用プログラムがリリースされる前のものを指します。また、ランサムウェアの進化やサプライチェーンを狙った攻撃なども多いです。
企業は常に最新の脅威情報を収集し、対策を更新し続けることが求められます。
リモートワークの増加
新型コロナウイルス感染症の影響により、リモートワークが急速に普及しましたが、この働き方の変化は新たなセキュリティリスクをもたらしています。
社外からの企業ネットワークへのアクセスが増加したことにより、セキュリティが十分でない個人所有のデバイスの使用が増えました。また、オンライン会議ツールを狙った攻撃も報告されています。
リモートワーク環境下でのセキュリティ対策として、VPNの活用や多要素認証の導入、従業員への継続的な教育を行うことが重要です。
目次へ戻るサイバーセキュリティ対策の基本
サイバーセキュリティ対策は企業の規模や業種に関わらず、全ての組織にとって不可欠です。以下で解説する対策は、あくまで全体の対策の一部であるため、包括的かつ多層的なアプローチが必要となります。
ここでは、サイバーセキュリティ対策の基本について詳しく解説します。
ゼロトラストに基づいたセキュリティ
ゼロトラストセキュリティは、信頼せず常に検証するという考え方に基づいたセキュリティモデルです。従来の境界型セキュリティとは異なり、ネットワーク内外を問わず、すべてのアクセスを検証します。
このアプローチの導入により、リモートワークの増加に伴うセキュリティリスクを軽減でき、クラウドサービスの利用拡大にも対応する柔軟なセキュリティ体制を構築できます。さらに、内部脅威にも効果的に対処できるため、包括的な防御が可能です。
ゼロトラストセキュリティの実装には、多要素認証やマイクロセグメンテーションなどの技術が活用されます。マイクロセグメンテーションとは、ネットワークを複数のセグメントに分割して、トラフィックのモニタリングや制御を行うセキュリティ設計技術のことです。サイバー攻撃のリスクを最小限に抑えつつ、業務効率を維持することができます。
パッチ管理
パッチ管理は、ソフトウェアやシステムの脆弱性を修正するための重要な対策です。
多くのサイバー攻撃は既知の脆弱性を悪用して行われますが、定期的にセキュリティパッチを適用することで、攻撃のリスクを大幅に低減できます。
効果的なパッチ管理のためには、自動更新機能の活用やパッチ適用のプロセスを確立することが重要です。また、重要度の高いパッチは速やかに適用するなど、優先順位をつけて管理しましょう。
多層防御の重要性
多層防御は、複数のセキュリティ対策を組み合わせて実施する方法です。
単一の対策に頼るのではなく、ファイアウォールやアンチウイルスソフト、侵入検知システムなど、異なる種類の防御策を重ねることで攻撃を防ぐ確率を高めます。多層防御の考え方は、ネットワーク、エンドポイント、アプリケーションなど、さまざまなレベルで適用できます。
多層防御を実施しておくことで、一つの防御層が突破されても他の層で攻撃を阻止できる可能性が高まり、安全性を高めることが可能です。
定期的なバックアップの実施
定期的なバックアップは、データ損失やランサムウェア攻撃からの復旧に不可欠です。
重要なデータやシステムのバックアップを定期的に取得し、安全な場所に保管しておきます。バックアップの頻度や方法は、データの重要度や更新頻度に応じて決定します。
また、バックアップデータの復元テストを定期的に実施し、緊急時に確実に復旧できることを確認しておくことも重要です。クラウドバックアップサービスの活用も、効果的な選択肢の一つとなります。
従業員教育と意識向上
サイバーセキュリティ対策において、従業員の役割は極めて重要です。
多くのセキュリティインシデントは、人的ミスや不注意が原因で発生します。定期的な従業員教育を通じて、最新の脅威や適切な対処方法について理解を深めることが必要です。
具体的には、フィッシングメールの見分け方、安全なパスワード管理、ソーシャルエンジニアリング攻撃への対処など、実践的なトレーニングを実施します。また、セキュリティポリシーの周知徹底やインシデント報告の仕組みづくりも有効です。
セキュリティポリシーの策定と運用
効果的なサイバーセキュリティ対策には、明確なセキュリティポリシーの策定と運用が不可欠です。
セキュリティポリシーは、組織全体のセキュリティ方針や具体的な規則を定めたものです。ポリシーには、アクセス管理やデータ保護、インシデント対応など、さまざまな側面を含める必要があります。
策定したポリシーは、定期的に見直し、最新の脅威や法規制に対応させることが重要です。また、ポリシーの遵守状況を監査し、必要に応じて改善を行うことで、組織全体のセキュリティレベルを継続的に向上させることができます。
目次へ戻るサイバーセキュリティ対策を強化するなら『Splashtop Enterprise』
サイバーセキュリティ対策を強化するなら、『Splashtop Enterprise』がおすすめです。
デバイスのセキュリティ健全性チェックによって、安全性の高いデバイスのみがリソースにアクセスできるようになっています。さらに、高度なパスワード管理機能により、パスワードの安全な保管と共有が可能です。
また、VPN不要で安全なリモートアクセスを提供し、SaaSアプリへのアクセス制御も行います。悪意のあるサイトや不審なサイトへのアクセスを自動的にブロックし、企業ポリシーに違反するサイトへのアクセスも制限することで、リスクを軽減します。
まとめ
サイバーセキュリティの重要性はデジタル化が進む現代社会において年々高まっており、企業ごとに適切な対策が必要です。
企業や組織は、マルウェア、ランサムウェア、フィッシング、DDoS攻撃、標的型攻撃、内部脅威など、多様化する脅威に直面しています。これらの脅威が増加する背景には、IT・デジタル技術の進化、サイバー攻撃の高度化、リモートワークの増加などがあります。
効果的な対策として、ゼロトラストセキュリティの導入、適切なパッチ管理、多層防御の実施、定期的なバックアップ、従業員教育と意識向上、セキュリティポリシーの策定と運用が挙げられます。
これらの基本的な対策を組み合わせ、継続的に実施することで、組織のセキュリティレベルを向上させ、サイバー攻撃のリスクを最小限に抑えることが可能です。