育児・介護休業法の改正ポイントは?担当者が知っておきたい点をチェック

育児・介護休業法の改正ポイントは?担当者が知っておきたい点をチェック

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こんにちは。スプラッシュトップ編集部です。

これまで核家族化や女性の職場進出など、社会情勢の変化に合わせて、政府は何度も育児・介護休業法を改正してきました。共働きが当たり前の時代となった近年では、仕事と子育ての両立がしやすい社会環境が求められています。

そのような状況のなか、厚生労働省が2024年中の育児・介護休業法の改正を検討しています。内容としては、「従業員の子どもが3歳になるまで、在宅勤務ができる仕組みの導入を、企業の努力義務とする」というものです。

今後の制度改正に対応する前に、そもそも育児・介護休業法とはどんな制度なのか、これまでの改正への対応漏れがないか、確認する必要があります。ここでは、育児・介護休業法の概要と、直近で施行された改正内容について解説していきます。

・育児・介護休業法とは 育児・介護休業法の概要

・育児・介護休業法の改正 育児・介護休業法を改正する目的 2022年4月~2023年4月の改正ポイント 2022年4月1日施行 2022年10月1日施行 2023年4月1日施行

・担当者が知っておきたいポイント 制度導入にあたりするべきこと

・厚労省が促進するテレワーク活用の方法 3つの代表的なテレワークツール テレワークにおけるセキュリティ対策

・まとめ

育児・介護休業法とは

育児・介護休業法の概要

育児・介護休業法は、子育てをする人、介護をする人の働き方を支援する法律です。望まない退職をすることなく、育児・介護と仕事を両立して働き続けることができるよう、休業期間や労働時間等を定めています。

育児に関連する制度の大まかな内容としては次の通りです。

  • 育児休業の期間
  • 所定労働時間の短縮等の措置(短時間勤務制度)
  • 所定外労働の制限
  • 子の看護休暇
  • 時間外労働の制限
  • 深夜業の制限

例えば、育児休業の取得可能な期間については、原則として子どもが1歳になるまで(保育所に入れない等、特別な事情がある場合は最長2歳まで)認められています。また「子の看護休暇」では、小学校に入る前の子どもが病気やケガをした場合に、原則として子ども1人に対して年に5日まで(該当する子どもが2人以上なら年に10日まで)を上限として看護休暇が取得できます。

介護に関連する制度の大まかな内容としては次の通りです。

  • 介護休業の期間
  • 所定労働時間の短縮等の措置(短時間勤務制度)
  • 所定外労働の制限
  • 時間外労働の制限
  • 深夜業の制限

例えば介護休業は、対象の家族1人につき通算で93日を、3回まで分割して取得することが認められています。また短時間勤務制度は、フレックスタイム制や始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ等を、制度の利用開始から3年以上の間に2回以上利用することが認められています。

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育児・介護休業法の改正

育児・介護休業法を改正する目的

少子化・高齢化が加速し、働く人が年々減少していることが社会問題になっています。小さな子どもがいる世帯でも、家庭と両立できる職場環境であれば、仕事を続けることが可能になるでしょう。子どもを増やしつつ不足する労働力を補える社会をつくるために、育児・介護休業法の改正が必要となります。

厚生労働省が2021年11月に発表した「育児・介護休業法の改正について」によると、約7割の女性が一人目の子供を出産した後も働き続けています。一方で、妊娠・出産を機に退職した理由については「仕事と育児の両立の難しさで辞めた」が41.5%でトップになり、働きながら子育てをする難しさも浮き彫りになっています。

育児をしながら働き続けるには配偶者の協力が必要と言えますが、同資料によると日本では6歳未満の子どもを持つ夫が、家事や育児に費やす時間は1日当たり1時間程度で、諸外国と比較して低いのが特徴です。

また、育児休業の取得率は女性が8割以上で推移する一方、男性は取得率が増加している傾向にあるものの、約14%にとどまっています。育児休業の取得期間も、男性は約6割が1か月未満となっており、9割以上が6ヶ月以上取得する女性とは大きな差があります。

男性が育児休暇を取得しない理由として「収入を減らしたくなかったから」「職場が取得しづらい雰囲気だから」「会社で制度が整備されていないから」という回答が上位に上がりました。このことからも職場の制度や環境整備が十分でない様子がうかがえます。

夫が家事や育児にかける時間が長ければ長いほど、妻が働き続ける割合が高く、第2子以降の出生割合も高い傾向にあることもわかっています。こうした統計結果を踏まえて、男女ともに仕事と家庭の両立をできるようにするため、政府は育児・介護休業法の改正を行いました。

2022年4月~2023年4月の改正ポイント

2022年4月~2023年4月の間に、育児・介護休業法の改正は3段階で施行されました。改正のポイントをご紹介します。

2022年4月~2023年4月の改正ポイント

2022年4月1日施行

・雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

育児休業を取得しやすい環境の整備
従業員が育児休業と産後パパ育休の申し出をしやすくするために、事業主は次のうちいずれかの措置(複数が望ましい)を講じる必要があります。

  1. 研修の実施
  2. 相談体制の整備(相談窓口設置)
  3. 自社の育休取得事例の提供
  4. 制度と育休取得促進に関する方針の周知

妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした従業員に対する個別の周知・意向確認の措置
本人または配偶者の妊娠・出産の申し出をした従業員に対して、育児休業制度を利用する際に必要となる周知事項を伝え、休業を希望するかを「面談」「書面交付」「FAX」「電子メール等」のいずれかの方法で個別に確認する必要があります。なお、FAXや電子メール等は従業員が希望した場合に限ります。

・有期契約社員の育児・介護休業取得要件の緩和(就業規則の見直し有り)

改正前は、育児休業を取得するためには(1)1年以上継続して雇用されていること(2)子どもが1歳6か月までの間に契約を満了することが明らかでないこと、という要件を満たす必要がありました。
改正後は(1)が撤廃され、無期契約社員と同様の取り扱いとなります。ただし、引き続き雇用されている期間が1年未満の場合においては、労使協定が締結されていれば除外することが可能です。

2022年10月1日施行

・産後パパ育休(出生時育児休業)

産後パパ育休は、子どもが1歳(最長2歳)まで休業可能となる育児休業制度とは別に、子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得が可能です。取得当初に申し出た場合は、2回に分割して取得することも可能です。
また産後パパ育休制度を取得している間においても、「この日だけ働く」「この日は4時間だけ働く」といった形での就業が可能です。就業可能な日は、休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分が上限です。また休業開始・終了予定日に働く場合は、その日の所定労働時間数が上限となります。
例えば、所定労働時間が1日8時間の従業員が2週間休業し、休業期間中の所定労働日が10日・所定労働時間が80時間の場合、
就業日数上限:5日
就業時間上限:40時間
休業開始・終了予定日:8時間未満
となります。
なお、産後パパ育休も就業日数が10日以下、または就業時間数が80時間以下の場合、育児休業制度と同様に育児休業給付の対象となります。

・育児休業の分割取得

改正前は、育児休業を分割して取得することは原則できませんでしたが、改正後は2回まで分割が可能になります。

2023年4月1日施行

・育児休業取得状況の公表の義務化

従業員が1000人を超える企業は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」を年に1回公表することが義務付けられます。自社のホームページのほか、厚生労働省が運営するWebサイト「両立支援のひろば」で公表することが望ましいでしょう。

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担当者が知っておきたいポイント

担当者が知っておきたいポイント

制度導入にあたりするべきこと

2022年4月~2023年4月の育児・介護休業法の改正においては、両親が柔軟に育休を取得し、交代で育児ができるように制度の見直しが行われています。企業においては労使協定の見直しと共に、就業規則の変更と労働基準監督署への届け出が必要です。また社内に改正点を周知し、働く人が制度に対して理解を深めるための研修の実施や、休業の取得に対するハラスメントの対策が求められます。制度導入にあたりするべきことは次の通りです。

・社内通知

育児・介護休業法の改正によって育児休業がどのように変わるのかを社内に通知します。特に2022年4月に施行された有期契約社員の育児・介護休業取得要件の緩和や2022年10月に施行された産後パパ育休の新設や育児休業の分割取得は、従業員にとって大きな変更となります。また育児休業、介護休業を取得する際は上司や周囲の協力も必要です。そのため社内に広く通知をする必要があります。

・就業規則の見直し・労働基準監督署への届け出

改正に合わせて就業規則の見直しが必要になります。また常時10人以上の従業員がいる事業場では、労働基準監督署への届け出が必要となります。
就業規則の見直しポイントや改正のポイントは、下記のチェックリストを参照し、担当者が「できていること」「できていないこと」を把握するツールとして利用してください。

就業規則の見直し・労働基準監督署への届け出

参照:上記チェックリストは「改正育児・介護休業法チェックリスト」(厚生労働省)をもとに作成

・労使協定の見直し

上記のリストにもあるように、就業規則で以下の条件を追記するには、労使協定を締結する必要があります。

  • 産後パパ育休・育児休業の対象者を労使協定で限定する場合
  • 産後パパ育休の申出期限を、原則としている休業の2週間前から、1か月前までの期日に変更する場合
  • 産後パパ育休を取得中に就業を可能とする場合

・制度の周知・研修

制度を定着させるためには、人事・労務担当者はもちろん、利用する本人や上司・同僚の理解を深める必要があります。そのため2022年4月施行の改正では、次の4つの方法のうち1つ以上を実施することを義務付けています。

研修
可能であれば従業員全員、少なくとも管理職は今回の改正内容を理解するために研修を受ける必要があります。

相談体制の整備
相談窓口を設置する場合、形式的なものではなく実質的な対応ができる体制を整備し、窓口を従業員に周知する必要があります。

自社の育休取得事例の提供
自社の育休取得事例を収集し、事例を掲載した書類の配布や企業内ネットワークへの公開によって、従業員が閲覧できるようにします。

制度と育休取得促進に関する方針の周知
産後パパ育休も含めて、育休を促進する経営層の方針を記載したポスター等をオフィスや企業内ネットワークに掲載します。

厚生労働省では雇用環境の整備に活用できる、育休取得の事例紹介やポスター例などの各種素材を公開しています。また厚生労働省が推進する「イクメンプロジェクト」では、管理職や若年層などそれぞれの立場向けの研修資料やハンドブックを作成しています。

・ハラスメント対策

育児休暇を取得する際に、上司から「男のくせに育児休暇を取るなんてありえない」と言われたり、同僚から「迷惑だ」と言われたりなどのハラスメントが発生しないように、対策する必要があります。今回の育児・介護休業法の改正では、妊娠・出産の申出をしたこと、産後パパ育休の申出・取得、産後パパ育休期間中の就業を申出・同意しなかったこと等を理由とする不利益な取り扱いが禁止されています。また上司や同僚からのハラスメントを防止する措置を講じることが義務付けられています。法や指針に定められている事業主が講じるべき措置をもとに、実態に即した対策を実行していきましょう。

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厚労省が促進するテレワーク活用の方法

厚労省が促進するテレワーク活用の方法

3つの代表的なテレワークツール

厚生労働省では、3歳までの子どもがいる従業員が在宅勤務できる仕組みの導入を省令で企業の努力義務とするため、2024年中に育児・介護休業法や関連省令の改正を目指しています。

また今回ご紹介した改正によって両親が交代で育休を取ることや、産後パパ育休期間中に就業する場合に、テレワークは育児と仕事の両立の強い味方になるでしょう。ここでは、テレワークを実現するための代表的な方法を紹介します。

・リモートデスクトップ方式

社内のデスクトップ画面を、ネットワークを通して社外の端末に転送し、社内の端末を遠隔から操作するという方法です。インターネットへの接続環境があれば、社内と同じ環境で操作できます。また社内の端末から重要なデータを社外に出すことなく操作が可能なため、情報漏えいのリスクを抑えられます。一方で、アクセスが集中しネットワーク回線の通信速度が遅くなると、レスポンスが遅くなるというデメリットがあります。

・VPN方式

インターネット上に仮想の専用線を設置し、社外にある端末から社内ネットワークに接続します。社内にいる環境と同じようにシステム等が利用できます。VPNは通信内容を暗号化して通信を行うため、安全な通信環境を確保できます。反面、セキュリティ管理が難しく、利用する端末やソフトウェアのアップデートが定期的に行われていないなど、情報漏えいのリスクが高くなる場合があります。

・仮想デスクトップ(VDI)

従業員の端末環境をサーバー等に構築し、遠隔からサーバーの端末環境にログインして操作を行います。セキュリティ状況を含めた全ての端末環境を一元管理できるため、セキュリティレベルを高めやすくなるというメリットがあります。その反面、アクセスが集中するとネットワークの回線速度の低下によって業務効率が低下する、環境構築にコストがかかるといったデメリットもあります。

3つの代表的なテレワークツール

※参照:「テレワークセキュリティ ガイドライン 第5版」(総務省)をもとに作成

多様な働き方を実現するためにそれぞれの方式のメリット・デメリットを考慮して自社に合ったものを選択し、セキュリティを高める対策を実行していきましょう。

テレワークにおけるセキュリティ対策

テレワークの活用にあたって、テレワーク環境のリスクマネジメントや、情報セキュリティ関連のルール整備は必要不可欠です。以下のチェックリストを参照し、担当者が実施すべきセキュリティ対策を確認しましょう。

テレワークにおけるセキュリティ対策

参照:「テレワークセキュリティ ガイドライン 第5版」(総務省)をもとに作成

テレワーク環境を含む情報システムに対するサイバー攻撃は、高度化・複雑化し続けています。育児・介護休業法の改正によりテレワーク活用を推進する際には、セキュリティ対策の見直しにも対応していきましょう。

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まとめ

2022年4月から2023年4月まで3段階に分けて施行された育児・介護休業法の改正ポイントは、次の5点です。

  1. 雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化
  2. 有期契約社員の育児・介護休業取得要件の緩和
  3. 産後パパ育休
  4. 育児休業の分割取得
  5. 育児休業取得状況の公表の義務化

改正に対応するには、担当者は次の5点を行う必要があります。

  1. 社内通知
  2. 就業規則の見直し・労働基準監督署への届け出
  3. 労使協定の見直し
  4. 制度の周知・研修
  5. ハラスメント対策

法改正での大きな目的となる多様な働き方の実現には、テレワークが不可欠です。そしてテレワークには社内ネットワークに安全にアクセスできる環境が必要です。
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